「通信制中学校」は存在しない?不登校の中学生への新しい学びの選択肢
2026.01.06
不登校や学校に足が向かなくなった中学生の保護者の方で「通信制の中学校に転校させて、子どもの負担を減らしたい」と思ったことがある人もいるでしょう。
しかし、現在の日本には「通信制中学校」は存在しません。
近年では、不登校生徒の増加に伴い、通信制高校が独自に提供する「中等部」や、柔軟な居場所を提供する「フリースクール」といった、多様で質の高いサポート体制が整備されています。中等部やフリースクールは、通信制高校に近い学びを実現する、新しい選択肢です。
この記事では、不登校の中学生とその保護者が知っておくべき義務教育の仕組みと、子どもの状況に合わせて選べる学びの選択肢について解説します。
目次
「通信制中学校」は存在しない
日本では、小学校と中学校の9年間は義務教育です。すべての子どもに教育を受ける権利を保障するとともに、保護者には就学させる義務があります。
文部科学省の制度上、中学校は、生徒が学校に登校して対面で学習する「全日制」または「夜間学級」での教育を受けることが前提とされています。これは、義務教育期間においては、生徒同士の集団生活や教員との直接的な関わりを通じた心身の成長を特に重視しているためです。
そのため、自宅学習が主となる「通信制」は、中学校段階では法的に設けられてません。
しかし、学びの自由度を求める中学生のニーズに応えるために、通信制高校が独自に設けている「中等部」があります。
正式な中学校ではありませんが、中学生が安心して学べる場として、教科学習や心理面でのサポートを提供している機関です。
「中等部」は、中学校に籍を置きながら通えるため、実質的に通信制中学校のような環境であるとして注目されています。
また、近年では、民間が運営する教育施設「フリースクール」も増えています。フリースクールでは、家庭と学校に次ぐ第三の居場所として、安心して過ごせるでしょう。
在籍校に通い続ける以外の選択肢
中学生の場合、必ず何らかの中学校に在籍している必要があります。これは義務教育の制度上、避けられません。
しかし、在籍校の教室に毎日通うだけが選択肢ではありません。
まずは、在籍中学校での別室登校を検討しましょう。保健室や相談室など、教室以外の場所で学習していれば、無理なく学校とのつながりを保てます。多くの学校では、養護教諭やスクールカウンセラーが別室登校の生徒をサポートしています。
次に、教育支援センター(適応指導教室)という選択肢があります。教育支援センターは、市町村の教育委員会が設置している公的な施設で、不登校の子どもたちが通える場所です。
教育支援センターでは、学習支援だけでなく、集団活動や体験学習なども行われており、学校復帰を目指すプログラムが用意されています。
専門的な学習をしたり、早期から大学進学を目指したりする場合は、フリースクールや中等部の利用がおすすめです。
なお、これらの選択肢を組み合わせることも可能です。例えば、週に数日はフリースクールに通い、週に1日は在籍校に登校するといった柔軟な学び方もできます。お子さんの状況に合わせて、無理のない形を探しましょう。
フリースクールとは
通信制中学校を探している保護者が、最も注目すべき存在が「フリースクール」です。
ここでは、学校外の学びの場としてのフリースクールの仕組みと特徴を紹介します。
フリースクールの基本的な仕組みと目的
フリースクールは、民間やNPO団体が運営する教育支援施設です。
カリキュラムは柔軟で、学習や体験活動、交流の場を中心に、子どもの興味やペースに合わせた学びを提供します。
また、学習指導要領にとらわれず、独自のカリキュラムを組んでいるフリースクールが多くあります。
フリースクールは、第三の居場所として、別の形で学びを続けることが目的です。
フリースクールに通うメリット
フリースクールに通う最大のメリットは、子どもが安心して過ごせる居場所を得られる点です。
不登校の子どもたちは、学校でのストレスや人間関係の問題、環境の変化などから心身に負担を感じている場合が多くあります。
そのため、フリースクールは、子どもたちにとって安心できる空間を作らなければいけません。
フリースクールでは、登校を強制せず、子どもの気持ちやペースを尊重する雰囲気が作られています。
「今日は先生と話すだけでもいい」「やりたいことから始めてみよう」という柔軟な対応が、子どもが再び学ぶ意欲や自信を取り戻すきっかけになります。
また、学習だけでなく、体験活動や友人との交流を通して社会とのつながりを感じられる点も大きな魅力です。
料理や工作、地域ボランティアなど、実践的な活動を通じて、人と関わる喜びや達成感を味わえるため、学校復帰や進学への前向きな気持ちを育む効果があります。
さらに、近年では、通信制高校やオンライン教育と連携したフリースクールも増えています。
通信制高校と提携している施設では、学習支援だけでなく心理的なサポート、進学指導なども受けられ、高校進学や社会復帰へのステップとしても有効です。
なお、在籍中学校長の判断で、フリースクールや中等部への登校が、在籍中学校の登校扱いとなるケースもあります。
フリースクールに通うデメリット
フリースクールには多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。
フリースクールはあくまで民間施設であり、法的には学校教育法に基づく正式な学校ではありません。
そのため、在籍している中学校での出席扱いや成績評価が自動的に認められるわけではなく、在籍校や担任、教育委員会との連携が欠かせません。
場合によっては、通っていても出席日数に含まれないケースもあるため、事前に学校側と確認しながら利用しましょう。
また、費用面も公立学校と私立とで異なります。
2015年に文部科学省が実施した「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」では、入会金が5万3,000円ほど、月額の授業料は3万3,000円ほど発生します。
経済的な負担が大きい場合は、自治体による助成制度の利用を検討しましょう。東京都では、2024年度から「フリースクール等利用者支援事業(助成金)」を開始しました。
「フリースクール等利用者支援事業(助成金)」では、フリースクールなどに通う不登校の義務教育段階の児童生徒の保護者を対象に、利用料に対して、月額最大20,000円の助成金を支給しています。
さらに、フリースクールは運営団体ごとに教育方針や雰囲気、スタッフの専門性に大きく差があります。それぞれの施設の特色を理解し、必ず見学や体験入学を通して子どもに合った場所を選んでください。

通信制高校の中等部とは
中等部とは、通信制高校が中学生向けに設けている教育機関です。
学びを止めたくない子どもにとって、柔軟で安心できる新しい選択肢となっています。
通信制高校が設置する「中等部」の特徴
中等部は学校教育法上の中学校ではありません。そのため、正式な学歴としては認められません。しかし、中学生が安心して学べる環境として、中等部を設置している通信制高校も増えてきています。
中等部は、登校日数を自分で選べる柔軟な学習スタイルが魅力です。在籍校のカリキュラムに沿った学習サポートや、一人ひとりのペースに合わせた指導が行われています。また、同じような境遇の仲間と出会える場でもあり、孤独感を感じにくいでしょう。
さらに、中等部から同じ法人が運営する通信制高校への進学がスムーズにできる点も大きな特徴です。
例えば、第一学院高等学校やN高等学校、飛鳥未来高等学校、クラーク記念国際高等学校などでは、中等部を設置しています。
中学校から高校への移行期に不安を感じる生徒にとって、慣れ親しんだ環境で学び続けられることは大きな安心材料となります。
中等部に通うメリット
中等部に通う最大のメリットは、将来の高校進学への道筋が明確になる点です。
中等部を卒業後は、通信制高校に進学するケースが多く、進路選択がスムーズになります。
また、中等部から通信制高校へ進学した生徒たちは、すでに柔軟な学習スタイルに慣れているため、高校での学習にもスムーズに適応できるでしょう。中等部時代からの友人や先生との関係が続く点も大きなメリットです。
さらに、中等部は、通信制高校のノウハウを活かした手厚いサポートも特徴です。
週1日から週5日まで通学日数を選択できる柔軟な学習スタイルや、オンライン授業の活用により、子どものペースに合わせて無理なく学習習慣を確立できます。
例えば、N高等学校中等部では、通信制高校と同じように、専門分野について学べるカリキュラムが整っています。
教員やカウンセラーによる心のケアも充実しており、安心して学校生活を送れるでしょう。
中等部もフリースクールと同様に、在籍中学校の出席扱いとなるケースが多くあるため、在籍中学校の登校に不安や抵抗感がある場合でも、安心して通わせられます。
中等部に通うデメリット
中等部が提供する学習内容は、在籍校のカリキュラムとは異なる場合があります。
そのため、全日制高校への進学を希望する場合は、在籍校との連携や受験対策を別途行いましょう。中等部を選ぶ際は、受験対策を行ってくれるかを確認したり、通信制高校への進学を前提としたりすると安心です。
また、フリースクールと同様に、中等部は学校教育法第一条に定められた中学校ではありません。そのため、中学校に在籍したまま中等部で学ぶことになり、別途学費が発生します。
「出席扱い制度」について確認を
不登校の子どもがフリースクールや中等部に通う場合「出席扱い制度」について事前に確認しましょう。
前述の通り、出席扱い制度とは、中学校に登校しなくても出席扱いとして認められる制度で、文部科学省が定めている制度です。
出席扱いが認められると、書類や調査書に出席日数が記録され、進学の際に提出できます。また、お子さんが学習した証でもあるため、自信にも繋がるでしょう。
なお、文部科学省「義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」で公表されている要件は主に以下の通りです。
- 保護者と学校の間に十分な連携・協力関係が保たれていること。
- 当該施設は教育委員会等が設置する公的機関であること。ただし、公的機関の通学が困難で保護者と本人の希望がある場合、校長に適切と判断されれば民間の相談・指導施設も考慮される。
- 当該施設に通所または入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること。
- 学校外の施設で行われた学習内容が、在籍校の教育課程に適切と判断された場合。
フリースクールや中等部への通学を検討する際には、まず在籍中学校に相談しましょう。多くの学校では、子どもの教育機会を保障するために、前向きに対応してくれます。
ただし、在籍中学校の教員が親身に対応してくれない場合は、中等部やフリースクールに直接問い合わせてみましょう。
そこで的確なアドバイスを得られたり、中等部やフリースクール側から在籍中学校へ連絡してくれたりするケースもあります。
フリースクールや中等部選びのステップ
フリースクールや中等部を選ぶ際に考えるステップを紹介します。
- 在籍校に相談する
- 資料請求をする
- 機関を訪問してスタッフと面談する
お子さんが居心地よく過ごせる機関を探すための参考にしてください。
在籍校に相談する
学校に相談すると、学校側からフリースクールや中等部を紹介してもらえるケースがあります。お子さんについて良く知っている先生であれば、最適な機関を探してくれるでしょう。
また、フリースクールや中等部に通う場合には、学校との連携が欠かせません。利用を検討する際は、必ず在籍校へ相談をしましょう。
資料請求をする
まずは、ホームページを見たり資料請求をしたりして機関の情報を集めましょう。
資料が届いたら、以下のポイントをチェックしてください。
- 理念や基本方針
- 年間スケジュールやイベントの有無
- 資格やスキルの取得が可能か
- 入学金・授業料などの費用
- 出席扱い制度が利用できるか
フリースクールや中等部にはさまざまなタイプがあります。
- 学校への復帰を目指す
- いずれは学校に行けるようになりたい人向け
- 完全個別指導を行っている
集団行動が苦手な人や学び直しをしたい人向け - 専門分野の学習ができる
- 興味のあることを学び、進路につなげたい人向け
出席扱い制度が利用できる場合でも、お子さんに合わない機関だと大きなストレスを与えてしまいます。複数の機関から資料請求をして、比較検討するのがおすすめです。
機関を訪問してスタッフと面談する
気になる機関へは必ず訪問し、スタッフと面談をしてください。
可能であれば体験入学をしたり、生徒がいる時間帯に訪問し、リアルな雰囲気を実感しましょう。
不登校のお子さんは、学校の先生や同級生と接する機会がなくなります。そのため、フリースクールや中等部はお子さんが家族以外との人との新しい交流の場になります。
お子さんの気持ちを丁寧にヒアリングし、学習面や心理面のサポートをしてくれるスタッフがいる機関であれば安心して通えるでしょう。

フリースクールや中等部は新しい学びの場
日本には「通信制中学校」は存在しません。しかし、民間が運営するフリースクールや通信制高校が設ける中等部など、お子さんの状況に合わせた多様な学びの選択肢が広がっています。
フリースクールや中等部を利用する際には、在籍校との連携を取りながら「出席扱い制度」などの仕組みをうまく活用し、お子さんが将来に向けて前向きに学べる環境を整えましょう。
お子さんのペースを尊重しながら、家庭と学校、そして支援機関が連携し、その子に合った学び方を見つけることが最も大切です。
