フリースクールと教育支援センターの違いとは?不登校の中学生の居場所選び
2026.01.09
不登校の中学生の数は年々増加の一途をたどっており、深刻な問題となっています。
不登校の状況にあるお子さんの居場所を探す際に「フリースクール」と「教育支援センター」を検討している保護者もいるでしょう。どちらも学校以外の学びの場として機能していますが、その性質や目的は大きく異なります。
かつて不登校は「学校に戻るべき状態」と考えられていました。しかし、現在では、学校環境が合わなかったり心身のエネルギーが枯渇していたりと、不登校の原因はひとつではありません。また、すぐに学校への復帰を目指すのが必ずしも「良いこと」だとは限りません。
そのため、どの居場所を選ぶかは「お子さんの今の状態と、将来的な自立に向けてどのような回復プロセスを歩ませたいか」という視点で考える必要があります。
この記事では、フリースクールと教育支援センターの違いを解説し、不登校の中学生にフリースクールが選ばれる理由を明確にしていきます。
目次
教育支援センターとは
教育支援センターは、不登校の児童生徒が、学校生活への復帰や社会的自立ができるよう支援するために、地方自治体の教育委員会が設置・運営する公的機関です。かつては「適応指導教室」と呼ばれていました。
教育支援センターは、学校という集団生活への再適応を促す施設です。多くの場合、学校の授業に準じた学習活動や集団での体験活動、カウンセリングなどが提供されます。
公的機関であるため、利用は原則として無料です。また、在籍中学校の校長と教育委員会の判断により、センターでの出席日数が在籍校の出席扱いとなります。
ここでは、教育支援センターの役割と支援内容や、適応指導教室から名称変更された背景について解説します。
教育支援センターの役割と支援内容
教育支援センターは、不登校の中学生などが学校以外の場所で安心して過ごし、学習や生活支援を通して、学校復帰や社会的自立を目指すのが主な役割です。
教育支援センターでは、生徒一人ひとりの状況に応じた個別の支援が行われます。
大人数のクラスでは学習に集中しづらい生徒などが、自分のペースで学習できます。また、基礎から学べる機会が提供されている点も魅力です。
また、教育支援センターでは、時間割が決められているケースが多くあります。時間通りに生活を送り、生活習慣の改善を図ることで学校への復帰を目指します。学習だけでなく、生徒同士のグループワークや活動を通じて社会性を育む機会も豊富です。
さらに、学校の教員に対して不登校に関する専門的なアドバイスを行うなど、在籍中学校との連携を強化し、学校復帰のためのサポートをしています。
適応指導教室から名称変更された背景
教育支援センターは、2003年頃から、それまでの「適応指導教室」という名称から順次変更されてきました。
「適応指導教室」は、学校に適応できていない子どもを指導する場所というニュアンスが強く含まれていました。
しかし、不登校が個人の問題ではなく、学校や社会のあり方、子どもの特性とのミスマッチから生じるという理解が広がるにつれて「適応」という言葉の持つネガティブなイメージを払拭する必要性が生じました。
新しい名称である「教育支援センター」は、教育的な側面から子どもを支援するというポジティブな意味合いを持っています。
これは、文部科学省が「不登校は誰にでも起こりうる」という認識を示し、学校復帰だけでなく社会的自立を視野に入れた教育支援の必要性を強調する流れに沿ったものです。
フリースクールとは
フリースクールは、学校以外の学びの場として民間団体や個人が運営する教育施設です。教育支援センターが「学校復帰を前提とした公的支援」であるのに対し、フリースクールは「今の子どもをそのまま受け入れ、その子らしい成長を支える」という考え方で運営されています。
フリースクールでは「学校への復帰が唯一の正解ではない」という立場から、子ども自身の選択や意思を最優先に考えます。
運営主体も多様で、NPO法人、教育関連企業など様々です。そのため、施設ごとに教育方針や活動内容は大きく異なります。ただし「子どもの今を否定しない」「子どもが安心できる関係性を築く」点は全ての施設に共通する基本的な姿勢です。
フリースクールの基本的な特徴
フリースクールの最大の特徴は「学校のような義務や強制がない」点です。
時間割はあっても参加は本人の自由であり、工作や雑談などの勉強以外の過ごし方も認められます。
学習内容も一人ひとりの学力や進度に合わせて個別にサポートしています。学校の授業に沿った学習を中心とする施設以外にも、体験活動や創作活動を重視する施設など、運営方針は多様です。
フリースクールでは、スタッフは「先生」ではなく「スタッフ」「サポーター」と呼ばれるパターンが多く、指導者というより伴走者としての関わりを大切にしています。
また、義務教育期間の小中学生を主な対象とした施設が多くあります。学校の教室のような区切りはなく、年齢の異なる子どもたちが少人数で交流しており、一人ひとりに目が届きやすい点も特徴です。 なお、最初は集団に入るのが難しい子でも、スタッフが見守る中で少しずつ慣れていき、自分のペースで交流に参加できるようになります。ひとりで読書をしたり、絵を描いたりするなどの個別活動を尊重しつつ、自然に交流ができるようサポートしています。
フリースクールが重視する「今の子どもを肯定する関わり」
フリースクールの根底にあるのは「不登校の状態にある今の子どもを、そのまま肯定する」という姿勢です。
フリースクールでは、学校に行けていない現状を「改善すべき問題」ではなく、「今はエネルギーを回復する時期」「安心できる居場所が必要な段階」と考えています。そのため、無理に学校への復帰を促したり、将来の進路を急いで決めさせたりすることはありません。
スタッフは子どもの感情を受け止め、本人のペースを尊重します。
学校行事が苦手で不登校になった中学生が「無理して参加しなくてもいいんだよ」といった声かけで安心し、数週間後には少しずつ参加できるようになるケースも少なくありません。
なお、フリースクールでは、友人の活動を見学できるようになったり自分の気持ちを言葉にできたりするプロセスを成長として捉えています。 フリースクールが重視している安心感と自己肯定感の回復が、その後の学びや社会参加への第一歩になります。

フリースクールと教育支援センターの違い
フリースクールと教育支援センターは、どちらも不登校の中学生を支援する場です。しかし、両者の支援の目的や考え方には明確な違いがあります。
ここでは、不登校の回復プロセスという視点から、フリースクールと教育支援センターの違いを整理します。
支援の目的の違い
教育支援センターの主な目的は、在籍中学校への復帰や学校生活への再適応です。そのため、生活リズムを整え、学習習慣を取り戻し、集団生活に慣れることが重視されます。
一方、フリースクールは、学校復帰をゴールに設定していません。学校に戻る選択をする子もいますが、それは数ある選択肢のひとつに過ぎません。
フリースクールでは、子どもが自分で考え、自分の人生を選べるようになることを目指しています。そのため、今すぐの成果よりも、長期的な自立や社会とのつながりを重視します。
子どもの自由度・安心感の違い
教育支援センターでは、一定のルールや時間割が設定されているケースが多く、学校に近い環境が提供されます。
すでに学校復帰への意欲があり、集団に対する不安が少ない子どもにとっては教育支援センターの環境は最適でしょう。
しかし、学校の枠組みそのものが負担に感じている場合は、再び緊張やストレスを感じてしまいます。
フリースクールでは、参加する活動や過ごし方を子ども自身が選べるため、心理的な負担が少なくなります。「行かなければならない場所」ではなく、「行きたいと思える居場所」になりやすい点が大きな違いです。
保護者への支援体制の違い
フリースクールでは、子どもだけでなく保護者への支援も重視しています。
不登校は、家庭全体の問題として捉えられやすく、保護者自身も強い不安や孤独を抱えがちです。フリースクールでは、定期的な面談や交流の場を通じて、保護者の気持ちに寄り添いながら一緒に考えていきます。
たとえば、不登校の子どもを持つ保護者同士が交流する場を定期的に開催しているフリースクールがあります。
また、通信制高校の情報を提供するなど、子どもたちの将来の選択肢を広げるためのサポートも豊富です。
なお、通信制高校とは、自分のペースで学習を進められ、レポートやスクーリングで単位を取得し、高校卒業資格が得られる高校です。
通信制高校への進学を検討するフリースクール生は多くいます。毎日通学が不要な点や自分のペースで学べるといった特徴が、フリースクールでの生活と似ているためです。
教育支援センターよりフリースクールが向いているケース
不登校の中学生にとって、どの居場所が合うかは一人ひとり異なります。
教育支援センターが力を発揮する場合もあれば、フリースクールの方が安心して過ごせる子どももいます。
ここでは、教育支援センターよりもフリースクールが向いていると考えられる代表的なケースを、不登校の回復プロセスという視点から具体的に見ていきましょう。
今のお子さんの状態に当てはまるものがないか、参考にしてみてください。
学校という枠組みそのものが負担になっている場合
学校における人間関係や校則、集団行動などに強いストレスを感じている子どもには、フリースクールの方が安心して過ごせる可能性があります。
たとえば、クラスの人間関係に疲れてしまった中学生が、教育支援センターでも時間割や集団行動にプレッシャーを感じ、通所が続かなかったケースがあります。一方でフリースクールでは、決められた枠に当てはめられず、本人の過ごし方を尊重され、安心して通えるようになったという例も少なくありません。
学校に近い環境に戻ることで再び心身の不調が出てしまう場合、学校から距離を置き、安心できる居場所でエネルギーを回復させましょう。
集団活動にトラウマや強い不安がある場合
いじめや人間関係のトラブルを経験した子どもの中には集団への参加が恐怖になっている場合があります。この状態で集団活動への参加を前提とした環境に置かれると、回復する前に再び心を閉ざしてしまうかもしれません。
集団生活が怖いと感じる子どもには、フリースクールの参加・不参加を自分で選べる経験が、少しずつ集団への信頼を取り戻すきっかけになります。
「参加しなくてもいい」という選択肢のあるフリースクールの方が、集団への信頼を取り戻しやすくなります。
生活リズムや心身のエネルギーが大きく落ちている場合
不登校が長引き、昼夜逆転や慢性的な疲労などが見られる子にとって、決まった時間に通所し、活動に参加することは高いハードルになるでしょう。
実際に、教育支援センターの時間割に合わせることが負担だった子が、フリースクールでは「行ける日に、行ける時間だけ」で受け入れられたために、徐々に外出できるようになったという事例もあります。
エネルギーが回復していない段階では無理に環境を整えるよりも、本人の状態に合わせて通えるフリースクールの方が、結果的に回復を早められる可能性があります。
「学校に戻らなければいけない」というプレッシャーが強い場合
教育支援センターでは、学校復帰を前提とした支援が中心に行われるため「学校に戻らなければいけない」というプレッシャーを強く感じてしまう子も少なくありません。
フリースクールでは、学校復帰をゴールに設定していません。そのため「今は回復に専念していい」と受け止めてもらえる環境があります。
その結果、安心感が生まれ、本人のタイミングで次の選択を考えられるようになるケースも多く見られます。 学校復帰へのプレッシャーが強い子どもには、ゴールを決めずに見守るフリースクールの環境を提供してあげましょう。
子どもの意思やペースを最優先にしたい場合
不登校の回復には「自分で選べた」という成功体験の積み重ねが必要です。しかし、次の進路や施設への通い方を大人が主導で決めてしまうと、子どもは再び主体性を失ってしまいます。
フリースクールでは、活動への参加や学び方を本人が選ぶことが基本です。たとえば、しばらくは雑談だけだった中学生が、自分から「少し勉強してみようかな」と言い出すケースも多くあります。
子ども自身の選択を尊重する関わりができるフリースクールは、主体性を取り戻すための土台として有効な手段です。

まとめ|不登校の中学生にとって大切なのは「合う居場所」
フリースクールと教育支援センターは、どちらも不登校の中学生を支える大切な選択肢です。しかし、支援の目的や関わり方には明確な違いがあります。
学校復帰を目指す支援が合う子もいれば、まずは安心できる居場所で心を回復させる必要がある子もいます。
不登校という状況に「正解」はありません。大切なのは、今のお子さんにとって無理のない居場所を選ぶことです。
もし、学校という枠組みに苦しさを感じているのであれば、フリースクールは有力な選択肢のひとつになります。
子どもが自分らしさを取り戻し、将来に向けて一歩を踏み出すための土台として、フリースクールという居場所を検討してみてはいかがでしょうか。
